Health Column
「血錆(ヒョルノク)」とは? 血管が錆びるという言葉の本当の意味
要点まとめ
血錆は「血管が錆びる」を縮めた通称で、学術用語ではありません。高血糖が繰り返されたときに血管で起こる、血管内皮機能の低下、終末糖化産物の蓄積、酸化ストレスを、たとえて表したものです。食後に血糖値が上がる数時間のあいだにも血管内皮の反応が低下するという研究があり、食後血糖の管理とあわせて語られます。
健康番組や広告で「血錆」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。血錆は「血管が錆びる」を縮めた通称です。医学の教科書に出てくる学術用語ではなく、血糖値が高い状態が繰り返されたときに血管で起こる損傷の過程を、鉄が錆びる様子にたとえた言葉です。
たとえが指す、実際の3つの変化
- 血管内皮機能の低下 — 血管の内側の壁は、一層の細胞層(血管内皮)で覆われています。血液がたくさん流れると、内皮からのシグナルで血管が広がりますが、この反応が鈍くなることを指します。病院では、腕の動脈を超音波で見ながら「血流依存性血管拡張反応」という検査で測ります。
- 終末糖化産物 — たんぱく質や脂質が糖とくっついてできる物質です。血管の壁にたまると、壁の構造をかたくし、炎症のシグナルをオンにし、活性酸素を生み出します。
- 酸化ストレス — 体内で活性酸素が過剰に作られた状態です。米国アルバート・アインシュタイン医学校のブラウンリー教授は、高血糖が血管を傷める複数の経路が、結局は細胞の発電所(ミトコンドリア)で活性酸素が過剰に生じることから始まる、というモデルを示しました。
食後血糖が一緒に語られる理由
血管内皮機能は、食事の後に血糖値が上がる数時間のあいだにも変化します。日本の熊本大学の研究チームが、ブドウ糖を飲んでもらった後に腕の動脈の反応を測った研究では、血糖の処理が正常な人は1時間後に反応が低下し、2時間後にはほぼ回復しました。一方、耐糖能異常(糖尿病予備群)や2型糖尿病のある人は、反応がより大きく低下し、回復も遅れました。
そのため、血管の健康を考えるときには、空腹時血糖の数字だけでなく食後血糖もあわせて見る必要があると言われます。
「血錆」という言葉を聞いたときに覚えておきたいこと
- 診断名ではありません。「血錆検査」という名前の公的な検査はありません。血管の状態が心配な場合は、血圧、血糖、脂質の検査と医療者への相談が出発点です。
- 錆を「はがし取る」という表現は誇張です。血管の損傷を元に戻すと言い切る食品広告には注意しましょう。
- 管理の基本は同じです。体重、身体活動、食事、禁煙、そして定期的な健康診断です。
- Kawano H, et al. Hyperglycemia rapidly suppresses flow-mediated endothelium-dependent vasodilation of brachial artery. J Am Coll Cardiol. 1999;34(1):146-54. DOI 10.1016/s0735-1097(99)00168-0
- Brownlee M. Biochemistry and molecular cell biology of diabetic complications. Nature. 2001;414:813-20. DOI 10.1038/414813a
- Goldin A, et al. Advanced glycation end products: sparking the development of diabetic vascular injury. Circulation. 2006;114(6):597-605. DOI 10.1161/CIRCULATIONAHA.106.621854
よくある質問
血錆は医学用語ですか?
いいえ。「血管が錆びる」を縮めた通称です。対応する学術的な概念は、血管内皮機能の低下、終末糖化産物、酸化ストレスです。
血錆を確認する検査はありますか?
「血錆検査」という名前の公的な検査はありません。血管内皮機能は、腕の動脈の超音波で測る血流依存性血管拡張反応検査などで研究されており、日常的には血圧・血糖・脂質の検査が基本です。
血錆と血糖値はどのような関係ですか?
高血糖の状態が繰り返されると、血管内皮機能の低下、終末糖化産物の生成、酸化ストレスが進む可能性があります。食後に血糖値が上がっているあいだにも、血管内皮の反応が一時的に低下するという研究があります。